雑談終電後の無人駅で、同じ人影に三回会った話
去年の秋、仕事帰りに乗り換えをミスって、山の近くにある無人駅で終電を待つことになった。ホームは一本、待合室には古い木のベンチだけ。電灯は黄ばんでて、虫が当たる音だけがしてた。
次の電車まで18分。待合室に入ると、ベンチの端に黒いコートの人が座ってた。顔は下向きで、膝の上に白い紙袋。気まずくて反対側に座ったんやけど、少しして外から踏切の音が聞こえた。見に行ったら踏切は鳴ってない。戻ると、その人は消えてた。足音も、ドアの音もなし。
ホームの反対側を見たら、フェンスの向こうに同じ黒いコートが立ってた。ワイより先にそこへ行ける距離じゃない。怖くなって待合室に戻ったら、また同じ場所に座ってた。白い紙袋も膝の上。思わず「さっき外にいました?」って聞いたけど返事はない。ただ紙袋の中から、カサ、カサ、と紙をこする音だけした。
もう待合室にいられなくてホームに出た。電車まであと6分。向かいの窓ガラスにワイの姿が映って、その後ろに黒いコートの人も映ってた。振り返ると誰もいない。ガラスを見ると、まだいる。
ガラスには映ってるのに、振り返ると誰もいない。
その時、駅のスピーカーからノイズ混じりのアナウンスが流れた。「まもなく、列車が、まいります」みたいな普通のやつ。でも最後に小さい声で、「うしろ、あけてください」って聞こえた。
電車が来て、乗る直前に待合室を見たら、黒いコートの人はまたベンチに座ってた。足元の白い紙袋から古い切符みたいな紙が散らばってて、全部同じ日付に見えた。車掌さんに「この駅って人います?」って聞いたら、「この時間はまずいませんね」って言われた。
家に帰って上着のポケットを見たら、濡れたみたいな古い切符が入ってた。駅名は読めない。でも日付だけは読めた。ワイがその駅にいた日と同じ日付やった。
普通に怖くて草も生えん
持ち帰り特典みたいにするな
後ろに何を乗せるつもりなんや
ホームに残るのも怖い、外に出るのも怖い、電車だけが味方
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